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  ものすごい勢いでリョーマの衣服を剥ぎ取り、手塚自身もシャツを脱ぎ捨てる。 
      そしてその勢いのまま、嵐のような激しさで身体中をまさぐられてリョーマは声を上げる余裕すらなくしていった。 
      二人分の荒い息遣いが部室に広がる。 
      「いっ……痛っ」 
      軽い痛みと共にリョーマの肌の至る所に赤い花びらが散らされる。 
      「…っ、や…っんんっ」 
      「……っ」 
      再びリョーマの唇に辿り着いた手塚が噛みつくような口づけをしてくる。 
      口づけながら、手塚はリョーマの肌に手を這わせ、探るように、確かめるように、優しく、熱く、余すところなく愛撫してゆく。 
      そしてその手を追いかけるように口づけてゆき、跡を残す。 
      愛撫の手は止まらないが、一向に先へ進もうとしない手塚に、リョーマはだんだん焦れてくる。 
      「…ねえっ…」 
      手塚が何も言わず顔を上げる。 
      「……焦らしてんの?」 
      リョーマが息を弾ませながら、手塚を睨む。 
      「いや」 
      リョーマを見下ろし、手塚が表情を変えずに答える。 
      「俺にどうして欲しい?」 
      「え……っ?」 
      「どうして欲しいんだ?」 
      「………っ」 
      リョーマは潤んだ瞳できつく手塚を睨んだ。 
      「…性格悪いよ、アンタ」 
      「今は……俺のしたいようにすると、お前を壊してしまうかもしれんぞ」 
      リョーマはジッと手塚を見つめると、クスッと笑った。 
      「どんな風に壊すの?やってみれば?」 
      「……」 
      手塚は口を噤んだまましばらくリョーマを睨むように見つめると、おもむろに立ち上がった。 
      ロッカーにおいてある部活用の救急箱を開け、中から傷薬を取り出す。 
      あまり使われることがないのか、ほとんど未使用に近いチューブのフタを取り、手塚がリョーマを振り返った。 
      頬を上気させ、潤んだ瞳でリョーマが見上げてくる。 
      「あ……っう!」 
      手塚は手にしたチューブをリョーマの秘蕾にいきなり差し込んだ。 
      「冷た……っ」 
      リョーマの中に半分以上絞り出してから引き抜き、残りを自分の手に出して自身に塗りつける。 
      ほとんど中身のなくなったチューブを床に落とすと、手塚がリョーマにのしかかった。 
      「…泣いて頼まれても止まらないぞ……いいな?」 
      リョーマは瞳を微かに揺らしながら、小さく頷いた。 
      手塚の熱塊が一気に根元まで押し込まれた。 
      「…っぅ」 
      馴染む間もなく、また一気に先端まで引き出される。 
      そのまましばらくゆっくりとした深い抽挿が繰り返され、徐々に加速し始める。 
      傷薬のぬめりに助けられてはいるが、充分に慣らされていなかったリョーマの後孔に痛みが走った。 
      「う………くっ」 
      だがリョーマはそれを口にせず、手塚の猛攻に歯を食いしばって堪える。 
      「く………リョーマ……っ」 
      手塚の激しい動きに、ベンチが壊れそうなほど軋む。 
      「くに、み…つっ!」 
      「リョーマ……っ」 
      「あっ、は…ぁっ!」 
      耳元で名前を囁かれて、リョーマの身体が震える。 
      傷薬よりも、もっと濃厚な粘着音が聞こえ始めた頃、強ばっていたリョーマの身体がようやくほどけてきた。 
      「あっ、はっ、ああっ、んっ…んんっ!」 
      微妙に角度を変えて突き上げられ、リョーマはきつく閉じたままだった瞳をうっすらと開く。 
      ほんのりとした月明かりの中、雄の顔をした手塚と目が合った。 
      「あ…っ、ああっ……っ!」 
      激しく抉り込まれて視界が歪む。連続して襲ってくる衝撃に目を開けていられない。 
      それでももっと手塚を感じたくて、リョーマは手塚の腰に脚を絡めて離れないようにしっかり巻き付ける。 
      「…っ」 
      一瞬目を見開いた手塚が動きを緩め、体重をかけてリョーマの中に深く深く自身を埋め込む。 
      「あ…、うんんっ!」 
      ゆっくりとした動きではあるが、ひと突きひと突きが重い衝撃を与えてくる。 
      凄まじい圧迫感で内蔵を押し上げられ、絡みついた内壁を巻き込んで引き出されてゆく。 
      「くにみつ……っ」 
      揺れる手塚の肩越しに月が見えて、リョーマは『Lunatic』と言う言葉をぼんやり思い出す。 
      今夜は満月ではなかったが、自分たちはあの月に魅入られた獣のようだとリョーマは思った。 
      「くにみつ……もっとっ…」 
      「くっ…」 
      リョーマは意識して手塚を締め付けた。手塚の瞳がさらに獰猛さを増す。 
      身体を起こしながら、手塚は自分の腰に絡みついているリョーマの脚を外してそのまま肩に担ぎ上げ、リョーマの身体を軽く持ち上げて壁に半ば寄りかかるような恰好にさせる。 
      「ああっ、んんっ!」 
      ベンチに手をついて手塚が腰を打ちつけ始める。 
      「やっ、ああっ、ああっ、やだぁっ、ああぁっ!」 
      激しすぎる勢いで奥まで抉り込まれ、リョーマの視界がスパークした。 
      手塚は、後から後から湧き上がる衝動を抑えることができない自分を改めて感じていた。 
      視界の隅に冴えた輝きを放つ月が映る。 
      (あれのせいだ…) 
      月明かりの中のリョーマの肢体はひどく艶めかしく蠢いて自分を誘う。 
      (こんなお前を見ていいのは、俺だけだ) 
      「リョーマ…っ」 
      手塚の動きがさらに加速し、スパートをかける。 
      「あああああぁっ!」 
      リョーマが手塚の腕を指が白くなるほど掴んだ。 
      「…っく、んんっ、ああっ」 
      手塚が喘ぎながらリョーマの奥深くに激情を注ぎ込む。 
      「ひっ…あっあっああっ!」 
      内部に手塚の熱を受け止めながら、リョーマも飛沫を迸らせる。 
      身体を痙攣させて長い絶頂を終えると、手塚は詰めていた喉を解放する。 
      喘ぐように呼吸しながらリョーマを見た手塚は、リョーマがうっすらと微笑みを浮かべて意識をなくしてしまっているのに気付いた。 
      「リョーマ…っ!」 
      「ん………」 
      覗き込む手塚に気付くと、リョーマは嬉しそうに微笑んだ。 
      「…くにみつ…」 
      「リョーマ…」 
      二人は唇を寄せ合い、甘い口づけを交わす。 
      「大丈夫か?」 
      リョーマはクスッと、大人びた表情で微笑んだ。 
      「もう終わり?」 
      「………いいのか?」 
      「だって、今のは日曜の分でしょ?…今日の『お仕置き』がまだ残ってるっすよ」 
      「ばか」 
      手塚は『お仕置き』という言葉に苦笑しながらも、全く衰えていない己の熱塊を緩く動かし始めた。 
      「リョーマ…」 
      「あ……っ、くにみつ……っ、好き……」 
      「俺も好きだ……リョーマ…」 
      そこで会話は途切れ、再び部室の中は二人の荒い息遣いで満たされる。 
      月が窓から見えなくなるまで、二人はお互いを求め続けた。
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