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Infinity Sweet Valentine
〜Infinity Lovers続編〜 楽しみにしていた二月の三連休初日は、大雪になった。 「国光、雪、降ってる」 「ん…?」 リョーマが身体を起こすと、手塚も気怠げに目を開けてリョーマの視線を追うように窓を見遣った。 「………かなり降っているようだな」 「うん。積もりそう。せっかく久しぶりにアンタとテニスしようと思っていたのに」 「テニスはいつでもできる」 ゆっくりと身体を起こし、手塚は愛しげにリョーマの身体を背後から抱き締めた。 素肌が触れ合い、直に伝わる体温に甘い恋情が込み上げてくる。 「国光…」 「ん?」 チュッと音をさせてリョーマの肩に口づけ、手塚はリョーマの耳もとで囁くように返事をした。 「ゃ……っ」 途端に小さく声を上げてリョーマが肩を竦める。 「リョーマ?」 「ぁ…」 リョーマを抱き締めていた手塚の腕がゆっくりと解け、その指先がリョーマの胸の突起に触れてくる。 「ん……」 「リョーマ……」 はっきりとした意図を持って、手塚の指先がリョーマの肌を滑り始める。 「………いい、か?」 「……うん…」 恋人たちはそれだけ言葉を交わして、再びベッドに身を沈めていった。 手塚の母・彩菜が気を利かせてくれ、三連休の間、手塚家を二人のために明け渡してくれた。彩菜が、手塚の父・国晴と祖父・国一を温泉旅行に連れ出してくれたのだ。 おかげで二人は、誰に遠慮することもなく甘い三日間を過ごせることになった。 「そういえば、『銀の枷』はもらったの?」 時計の針が午後へと大きく傾いた頃、昨夜から繋ぎ続けていた身体を漸く離し、二人は食事のためにキッチンに移動してきた。 「いや、まだもらってはいない。同族の専門家がひとつひとつ手作りしているせいで時間がかかるらしい。いろいろ注文もつけたしな…。だが今度の満月までには出来上がるそうだ」 「ふーん」 食器棚から皿を二枚取り出しながら、リョーマはあまり関心のなさそうな返事をした。 『銀の枷』とは、満月の夜に手塚が『月の狼の本来の姿』に変化してしまうのを抑え込むために必要な『戒めの呪具』だ。変化をした手塚は、見た目こそ美しく 艶めかしいが、その性質はヴァンパイアであるリョーマでさえ疲れ果てさせるほどの体力と精力を備えている。そのため、その『性質』を抑え込むために『銀の 枷』が必要になる。 昨年末、ちょうどリョーマの誕生日に初めて『覚醒』した手塚を相手にしたリョーマは、三日三晩、ほぼ休む間もなく貪られ続け、しばらくはベッドから出るこ とも、いや、指一本動かすこともままならなかった。左右に開かされ続けた股関節の鈍痛と、延々擦られ続けて腫れ上がった後孔の痛みは、今思い出しても苦笑 が漏れるほどひどかった。 つい半月ほど前も満月に手塚が銀の変化を起こし、三日間、夜な夜なリョーマの部屋を訪れた手塚に朝まで貪られた。その時はまだ、インターバルをおいたせいか、股関節や後孔が痛むようなことにはならなかったが、ひどい寝不足で、昼間の学校生活がグダグダになった。 それでも、リョーマは手塚に抗議したことはない。 なぜなら、リョーマは、そんなふうに手塚が自分を貪ってくれることが嬉しかったから。 (『銀の枷』なんかいらないって言ってるのに……) どちらかといえば、『銀の枷』を作ることに、リョーマは抗議した。 だがリョーマの身体を気遣う手塚は、『銀の枷』を装着することを頑なに主張した。 「……ばか…」 食器棚に向かってリョーマがぼそりと呟くと、手塚が怪訝そうに視線を向けてきた。 「何か言ったか?」 「べつに」 唇を尖らせたまま振り返ると、手塚は一瞬目を見開いてから、ふわりと微笑んだ。 「……まだ『銀の枷』のことで怒っているのか?」 「べつに怒ってないよ」 手塚から視線を逸らしてテーブルに皿を並べ、リョーマは小さく溜息をついた。 「怒ってはいないけどさ……国光は本当に枷なんかつけたいわけ?」 「……ああ」 真っ直ぐ見つめ返されて、リョーマは一瞬言葉に詰まった。 「でも……オレは、銀色のアンタのこと好きだよ。エッチのことだけじゃなくてさ。すごく綺麗だから……月に一回逢えるのが、すごく楽しみって言うか……」 「だがその度にお前がひどい目に遭うだろう?」 「平気だよ。だってオレは、」 「ヴァンパイアだから、…か?」 苦笑しながら手塚に先に言われてしまい、リョーマは口を噤んで小さく頷いた。 「それは、そうかもしれないが……たぶんこれから、俺はもっとお前を貪り出すようになるぞ」 「え?」 予想と違うことを言われ、リョーマは目を見開いた。 「もっと、って……?」 「ああ」 手塚は静かに頷いてから、カチッと音をさせてコンロの火を消した。 「…銀の変化を起こした俺は、俺自身でさえ驚くほど飢えている。まるで狼の本能とでも言うかのように、お前のすべてを貪り尽くして、食らい尽くしたい衝動に駆られる」 「食らい尽くす……」 「だから、いつか、お前を抱き殺しそうで、恐いんだ」 「………国光…」 「お前を失ったら、俺は生きてゆけない」 揺れる瞳で手塚にじっと見つめられ、リョーマは引き寄せられるように手塚のすぐ傍まで歩み寄る。 「…そう簡単に死なないってば」 「保証はないだろう」 リョーマが苦笑すると、手塚は顔を顰めてリョーマの身体を引き寄せた。 「愛してるんだ……失いたくないと思うのも、大切にしたいと思うのも、当たり前だろう?」 「うん………オレも、アンタのこと、大事にしたい……」 「リョーマ…」 「大好き、国光」 見つめ合い、ゆっくりと唇を重ねてゆく。何度か啄みあってから、舌の平を擦りつけ合い、熱く絡ませてゆく。 「ん……ふ、ん……っ」 「……リョーマ……っ」 リョーマが熱くなり始めた腰を擦り寄せると、手塚の雄も熱く崇ぶり始めていた。 「あんだけシたのに……オレたち、ヤラシイね」 「そうだな……」 二人で顔を見合わせて小さく苦笑し、だがすぐに笑みを消して熱く見つめ合い、唇を重ねていった。 そのままキッチンでしばらくSEXに耽り、「遅い昼食」だったはずの食事は「早い夕食」になっていた。 未だSEXの余韻に頬を上気させてボンヤリと手塚を見つめるリョーマに、手塚は小さく苦笑する。 「そんなふうに見つめられると、また襲いたくなる」 「ん?ぁ……ごめん……なんか、スゴイ、幸せで……」 モゴモゴと口籠もるリョーマに、手塚は、今度は嬉しそうに微笑みかける。 「俺も幸せだ。ありがとう。リョーマ」 「オレはべつに何もしてないよ」 「こうして傍にいてくれるだろう」 「………」 手塚の言葉に頬を染めて頷くと、温かなスープの入った皿を目の前に置かれた。 「………今度の木曜日は、何か予定はあるか?」 「え?別にないけど?」 「夜、逢えるか?」 「うん。……ぁ、そっか、バレンタイン……」 リョーマが気づくと手塚がふわりと微笑んだ。 「アメリカでは男性から愛を告白する日なのだろう?…まあ、性別に拘るつもりはないが、お前に贈りたいものがあるんだ」 「じゃあ、オレからも贈るね。それで、ちょっとだけでも……」 「ああ。平日だから互いの家は駄目だろうが……俺も、少しの間だけでもいいから、お前に触れたい」 「うん」 頬の赤みを隠すようにスープを口に運びながらリョーマが頷く。 「まあ、まずはこの連休中、たっぷりお前を補充させてもらうつもりだが、な」 甘い声で囁くように言われ、リョーマの頬が赤みを増す。 「補充されるのはオレの方って気がするけどね」 「……そうかもな」 クスッと笑う手塚の笑顔をチラリと盗み見ながら、リョーマも小さく微笑んでみる。 (幸せ、だよな……) 手塚と出逢うまでは、きっと自分を愛してくれる者などこの世には一人もいないのだとリョーマは思っていた。 なぜなら、それまでリョーマがしてきた恋は、どれも成就せず、激しく相手に拒絶される形で終わってきたからだ。 手塚にも、拒絶されて終わるのだと思っていた。 なのに、手塚はリョーマを受け入れてくれるだけではなく、自らリョーマを欲してくれた。そして、さらに驚くことには、手塚は『月の狼』の一族だと言うことまでわかり、ヴァンパイアであるリョーマとは何もかも相性のいい相手だとわかった。 何もかも─────そう、血統の相性も、SEXの相性も。 そんな二人が出逢えたのは、偶然なのか、必然だったのかはわからない。 だがこうして二人が出逢えたことに、リョーマは心から感謝している。 出逢えて、愛し合えたことに。 もうこれ以上望むことなはない。 これ以上望むものなど、本当に、何もない。 (アンタが傍にいてくれれば、本当に、他には何もいらないよ) またじっと手塚を見つめてしまっていたことに気づき、リョーマは慌てて目を逸らしたが、遅かった。 「……食事が終わったら、覚悟してくれ」 「え………」 「そんなに熱っぽく見つめられては、たまらない」 「ぁ……」 頬を染めて俯くリョーマに、手塚は優しく微笑みかけた。 蕩けそうに甘い三日間が終わり、待ちきれないリョーマの心情をカレンダーが汲んでくれたかのように、すぐにバレンタイン当日となった。 部活を終えたリョーマは、待ち合わせの公園まで全力で走っていき、手塚を見つけた。 「国光!」 「リョーマ」 名を呼び合い、走ってきた勢いのまま、リョーマが手塚に抱きつく。 「リョーマ」 しっかりと抱き留めてもらい、そのまま強く抱き締められて、リョーマはうっとりと目を閉じる。 「ごめん、すごく待った?」 「いや、大丈夫だ」 部活が終わる頃に一度雪がちらついたのを思い出し、リョーマはすまなそうに手塚を見上げたが、手塚はただ優しく微笑んでくれるだけだった。 「どこか、少しでもあったかい場所に行ければいいんだけど…」 「それなんだがリョーマ、うちに、来ないか?」 「え?」 願ってもない案を出されてリョーマは目を丸くした。 「なんで?いいの?」 「ああ」 「うん、行く!」 「だが、泊まりは駄目だぞ?明日も学校があるからな」 「うん。それでもいいよ。ギリギリまでアンタの傍にいられれば」 リョーマが嬉しさを隠しきれずに手塚の腕にしがみつくと、手塚もまた嬉しそうに目を細めた。 「今からなら結構時間はある。ゆっくりしていってくれ」 「うん」 ぴったりと身を寄せながら二人は歩き始める。 「でも、いいの?家の人は?」 「ああ、皆家にいる」 「そ…なんだ…」 もしかしたらまた彩菜が配慮してくれて家族を外へ連れ出してくれたのかとリョーマは期待した。だがそうではないと知り、ほんの少し肩を落とす。 「そうガッカリするな。母に、少し特訓してもらったんだ」 「特訓?」 怪訝そうにリョーマが聞き返すと、手塚は柔らかく微笑んだ。 「成果は俺の家に着いてから見せてやる」 「………うん」 よくはわからないが、手塚が何か、自分たちの時間のために「特訓」してくれたのだとわかり、リョーマは嬉しくなった。 それがどんなものであれ、手塚が自分たちの時間を大切に考えていてくれることがわかったからだ。 「大好き、国光」 「ああ、俺も、愛してる、リョーマ」 大通りに出る前に二人は唇を寄せ合い、チュッと軽い口づけを交わす。 「急ごう」 「うん!」 二人はそっと手を繋いで、手塚家へと急いだ。 「いらっしゃい、越前くん」 「お邪魔します」 出迎えてくれた彩菜は相変わらず独特の雰囲気を持っていて、リョーマはいつものように、懐かしいような温かな感覚に包まれる。 「ただいま母さん。リョーマ、先に部屋に行っていてくれ。お前の好きなジュースを持って、すぐ行くから」 「うん」 リョーマは嬉しそうに頷き、彩菜に小さく一礼してから手塚の部屋に向かった。 もう何度も訪れた手塚の部屋に入り、適当にくつろいでいると程なくして手塚が部屋に入ってきた。 「待たせたな」 極上品のグレープジュースの入ったグラスをトレイごと机に置き、手塚がリョーマに微笑みかける。 「これは母からお前に」 手塚がトレイの上に乗っていた小さな箱を手に取り、リョーマに渡す。 「義理チョコってヤツ?」 「義理じゃなくて、感謝チョコだと言っていたぞ」 「感謝?オバサンがオレに?」 箱を受け取ると、小さなカードが着いているのを見つけて、リョーマは早速読んでみる。 「……『息子を選んでくれてありがとう』………だって」 頬を染めながら読み上げると、手塚の頬も仄かに染まった。 「そういえば、うちの母さんからもチョコ預かってきたよ」 「え?」 リョーマがバッグから小さなペーパーバッグを取り出し、そのまま手塚に手渡す。 手塚が中を覗くとやはり小さなカードが着いていた。 「……『これからもリョーマをよろしくお願いします』とのことだ」 リョーマは一瞬目を丸くしてから、プッと笑い出した。 「うちの母さん、ちょっと変わってるから」 「うちもだろう」 「でも、認めてくれて、よかった」 「ああ。感謝しないとな」 「うん」 もう一度それぞれの手にあるカードを見つめ、そうして顔を見合わせて微笑み合った。 「ぁ、じゃあ、今度はオレからね」 「ん?」 リョーマはまたバッグを漁り、先程よりも少し大きめの紙包みを取り出した。 「はい、愛情たっぷりのバレンタインギフト」 「ありがとう。開けていいか?」 「うん」 艶のある黒い包装紙にシルバーのリボンでラッピングされたものを、手塚は丁寧に解いてゆく。中の箱もやはり黒い艶のある紙でできており、銀箔で『銀月夜』と押されていた。横文字の銘柄が多い中、和風の名と書体が艶めいて映り、手塚はリョーマのセンスの良さに目を細める。 箱を開けると、そこには三日月の形をしたチョコと、美しい石のチャームがついたシンプルなシルバーのブックマーカーが入っていた。 「その石、ちゃんとアンタの誕生石だから。なんだっけ、えーと、トルマリン?」 「そうなのか…ありがとう。大切に使わせてもらう」 「チョコはビターにしたよ。その方が好きかなって」 「ああ……リョーマ」 「え?」 グッとリョーマを引き寄せ、手塚が深く口づける。 「くにみつ……」 甘い口づけに蕩けてゆく思考でなんとか名を呼ぶと、手塚はとても優しい瞳でリョーマを見下ろしていた。 「たくさん俺のことを考えてくれたんだな……ありがとう、リョーマ」 「うん…」 喜んでもらえたのが嬉しくて、リョーマはニッコリ微笑んで手塚の胸に顔を埋める。 「俺が用意したものも、受け取ってくれるか?」 「え?あ、うん、もちろん」 手塚の言葉に顔を上げると、チュッと額に口づけられた。 「ちょっと待っていてくれ」 手塚は自分の机の引き出しから小さな水色の箱と、それよりも二回りほど大きな黒い箱を持ってきた。 「まずは、こちらを」 そう言って手塚は小さな箱をリョーマに手渡す。 「開けていいの?」 「ああ、もちろん」 微笑んで頷かれ、リョーマはワクワクとして小さな箱のラッピングを解いて箱を開いた。 「わ」 中には一口サイズのチョコレートが五つほど並んでおり、それぞれの粒の上にさりげなく金泊が飾られていた。 「お前の綺麗な金の瞳をイメージしてみた。味は、ビターとミルク。ビターの方は赤ワインの香りがついている」 「うん…いい香り…」 「口を開けて…」 「ぁ……」 手塚の綺麗な指がチョコレートを摘み上げ、リョーマの口にそっと運ぶ。 「ん……美味しい……すごい、赤ワインのいい香りが、いっぱい広がってくる感じ…」 うっとりと目を閉じて舌の上で蕩けてゆく快感を味わっていると、顎を捕らえられ、手塚に口づけられた。 チョコの絡まる舌を手塚の熱い舌に絡め取られ、リョーマの口内が赤ワインとチョコと手塚の香りで満たされる。 「ん……」 「………本当だ……赤ワインの香りが、チョコの味を引き立てているな」 「でも……アンタのキスの方が美味しい………もっと、して……」 「煽るな」 囁き合い、再び唇を寄せ合って舌を熱く絡め合う。 「ん……ぅ、ん、あ……くにみつ……っ」 「確かに……どんなチョコレートも、お前の唇の味には敵わない……」 甘く甘く、唇を触れ合わせながら囁かれ、リョーマはゾクリと身体を揺らして手塚の胸に倒れ込む。 「ねえ……声、出さないようにするから……して」 「リョーマ……」 「アンタが欲しいよ……ダメ?」 「駄目じゃない。だが、ちょっと待ってくれ」 「?」 手塚がふわりと微笑んでリョーマの身体を優しく離す。 「国光?」 手塚は黙ったまま微笑むと、ゆっくり立ち上がってドアの前に立った。 「なに……?」 暫し黙り込んだ手塚は、ふぅ、と一呼吸おいてから徐に左手をドアに翳した。 「『流れゆく時の川ここに留まりて、暫し安息の眠りにつかん。人の目に映りし色、形、人の耳に留まりし音、人の心に留まりし香り、すべてを月の光に包みて隠さん。鮮やかなるもの朧に、強きもの儚く、再び我ここに立つまで、この扉、閉ざさん。成就!』」 朗々と手塚が言葉を紡ぎ、詠唱が終わると、空間がヴン、と奇妙な音を立てた。だがその音もすぐに止み、辺りはしんと静まりかえる。 「………よし。成功した」 「え?」 手塚がほっと安堵の息を吐き、リョーマを振り返る。 「なに、したの?」 「結界を張った。俺が再びここに立つまで、この結界は破られない」 「……じゃあ…」 「ああ、誰もここには来ない」 「スゴイ!」 リョーマは瞳を輝かせて手塚を抱き締めた。 「特訓て、このこと?」 「そうだ。母に教えてもらった」 「これも月の狼だからできること?」 「そのようだ。もともと月の狼の根は日本にあるらしくてな。血の薄まった今でも、日本では術が使いやすいらしい」 「スゴイスゴイ!」 さらにリョーマがギュッと手塚に抱きつくと、リョーマの身体もぎゅうっと抱き締め返された。 「こんなふうに必死になるほど、俺はお前が欲しいんだ。いつだって、どこでだって、お前が欲しくてならない」 「……うん」 「お前を抱きたい。いいか?」 「いいに決まってるじゃんか……嬉しい、今日はできないかもって思っていたから…」 リョーマがうっとりと呟くように言って手塚に身体を擦り寄せると、手塚はリョーマの身体を抱き上げてベッドに運んだ。 「ん…っ」 口づけながら互いの服を脱がし、だがすべて脱がすまで待てなくて、すぐに互いの性器に手を伸ばして撫で擦る。 「もう固い…」 「アンタのも、スゴイ尖ってきてる」 トロリと見つめ合い、ねっとりと舌を絡め合う。 「お前の舌が、どんどん甘くなる」 「アンタのだって……甘くて、熱くて……たまんないよ……」 「リョーマ」 「あぁっ」 剥ぎ取るようにして少し乱暴にズボンが脱がされ、リョーマの下半身が露わになる。 「リョーマ…リョーマ…っ」 「あぁ……あ、んっ」 勃ち上がりかけた性器をすっぽりと口に含まれ、舌を巧みに動かされて先端が舐め回される。その先端に蜜が溢れてくると、手塚は音を立ててその蜜を啜り上げた。 「や、あぁ……」 「ここも甘い……」 根元から先端までを舐め上げ、手塚がそう言って小さく笑う。 温い愛撫に焦れて腰を揺らめかせると、手塚の力強い腕に腰を押さえつけられ、念入りに性器に口淫が施される。 「ああ、あ……あ、やぁ……もっと、強く、して……っ」 リョーマの願い通り、ジュポジュポと大きな音を立てて、手塚がリョーマの熱塊にたっぷりと唾液を絡めながら口内を出し入れする。 「は、あぁ、あ、いい……っ」 時折先端を舌の先でつつかれ、穴をこじ開けられ、あまりの快感にリョーマの身体が細かく痙攣を起こす。 「リョーマ……脚を開け…」 優しく命令され、リョーマは抗わずに脚を大きく開いて手塚の前に秘蕾を晒す。 「いい子だ」 手塚は満足げに微笑んで、晒されたリョーマの秘蕾に舌を這わせ始めた。 「あぁ、ん……や、あぁ…」 リョーマの声に一層艶が混じり始め、手塚の官能を揺さぶる。 固く閉じられた秘蕾を舌先でつついていると、ゆっくりと花開くようにそこが綻び始める。 「リョーマ」 手塚は左手の指をリョーマの口の中に滑り込ませ、言葉にはせずに舐めろと催促する。 「は…あ、ぁん、んぐ…」 必死に手塚の指を舐めて唾液を絡ませるリョーマの牙が尖り始めているのをさりげなく指先で触れて確認してから引き抜き、手塚はしっとりと濡らされた指でリョーマの後孔を解し始めた。 「ぁ……あん……っ」 初めは指一本がやっと入るきつさだった後孔が、手塚の丁寧な愛撫で徐々に広げられ、やがては指四本を飲み込むまでに解されてゆく。 「挿れるぞ」 「ん……早く……」 潤んだ瞳と濡れた唇が手塚を誘う。 リョーマの全身は桜色にほんのりと染まり、緩く乱れてさらに手塚の情欲を煽った。 「たまらない……お前は、本当に……っ」 呻くように呟きながら手塚がリョーマの後孔に肉剣の切っ先を宛う。 「ぁ……」 「リョーマ…っ」 「あぁぅっ!」 ズブリと音を立てて手塚の剛直がリョーマの胎内に捩り込まれる。 「くっ」 根元まで埋め込むと、手塚はすぐに腰を揺らしてリョーマの身体を揺さぶり始めた。 「あ、あ、あ、あっ」 「リョーマ、リョーマ…っ」 ギシギシとベッドが揺れる。 薄く開かれたリョーマの瞳は、すでに金色への変化を見せ始めていた。 「あうっ」 膝裏に手をかけて、思い切り左右に脚を開かせ、その中心を固く太く変形した肉棒で抉り回してやると、リョーマはギュッと目を閉じて喘ぎながら髪を振り散らした。 「リョーマ……あぁ……締まる……痛いか…?」 耳元で熱く囁いてやると、リョーマも甘く喘ぎながら「平気」と小さな声で言った。 手塚はリョーマの脚を自分の腰に巻き付けさせ、覆い被さるようにのし掛かって腰を叩きつけ始める。 「ひ、いっ、ひぁっ、あぁっ」 リョーマが金色の目を見開いて身を捩るように背を撓らせる。 「リョーマ…あぁ、リョーマ……、好きだ……リョーマ……っ」 「あぁ…くに、み…つ……っ、好き……好き……もっと、奥、突いて……ぇ…っ」 求められ、手塚が応えるようにさらに奥を抉り回すと、リョーマの身体が歓喜にビクビクと痙攣する。 「あぁっ、そこ……っ、いいっ、もっと……もっと、あぁっ!」 開いたままのリョーマの唇から長い牙が覗く。 だがまだ手塚はリョーマに自分の首筋を晒してはやらず、届きそうで届かない距離を保って何度もその熱い胎内を抉り続ける。 「あぁっ、あぁっ、あッ。あぁんっ、やっ、気持ちいいっ、いいよ、ぉ…っ!」 ギッシギッシとベッドが壊れそうなほど大きく軋む。 閉じられた空間の中に、肉を叩きつける音と、湿った粘着音と、荒い二人分の息遣いが充満する。 リズミカルに打ち付けていた腰をリョーマの奥深くで止め、大きく腰を回すようにして抉ってやると、リョーマが声にならない叫びをあげて身悶える。同時にギュウギュウと手塚の肉棒が締め上げられ、気を失いそうなほどの快感に二人は溺れてゆく。 「あっ、あっ、あぁっ、あぁぁんっ、いいっ、あ、あぁっ」 勃ち上がりきったリョーマの雄は先端からトロトロと蜜を零し続け、手塚の剛直がリョーマの奥深くを抉り回すと、時折我慢しきれずにピュッと小さく愛液を噴き上げるほどギリギリのところで弾けずにいる。 「あぁっ、あぁっ、ぁあぁっ、やっ、もう、イかせ…てっ!」 泣きながら甘く懇願され、しかし手塚はそれでもまだリョーマの射精の瞬間を引き延ばし続ける。 「くにみつ…っ」 必死に自分の名を呼ぶリョーマが愛しくて、手塚は堪らずに口づける。 「んっ、んんっ」 「リョーマ…っ」 「ぁ……好き……すき……っ」 手塚はふわりと微笑むと、リョーマを引き寄せてその目の前に自分の首筋を晒してやった。 「ぁ……くにみつ……」 リョーマが夢中になって手塚の首筋に舌を這わせ始める。 「来い、リョーマ」 「あぁ…んっ!」 「!」 リョーマの牙が、ズブリと深く手塚の首筋に埋まる。 「あぁ……リョーマ……っ」 直後、手塚の腹に熱い液体が叩きつけられた。 「んっ、んっ、んっ」 手塚の首筋に縋りつくようにして牙を突き立てながら、リョーマが小刻みに身体を震わせて射精を繰り返す。その間も手塚は止むことなくリョーマを揺さぶり続け、きつく窄まるその熱い胎内を思う様突き上げ、抉り回し、さらにその奥まで肉剣を深く捩り込む。 「ん……うっ、あ、あぁぁんっ」 あまりの激しさにリョーマの牙が手塚の首筋から外れ、リョーマはまた甲高い嬌声を上げ始める。 リョーマの愛液でぐっしょりと濡れた手塚の腹に擦りつけられるリョーマの雄は、再び頭を擡げ始めていた。 だが、リョーマが充分に張りつめるまで待つことができそうにないと思い、手塚は左手を滑り込ませてリョーマの熱塊を扱き始める。 「ひ!、やっ、あぁっ、ダメッ、すぐに、イっちゃう!」 「一緒に、いこう」 「ぁ……」 手塚が熱く囁くと、リョーマは金色の瞳で真っ直ぐ手塚を見つめ、微笑んだ。 「うん……」 「いくぞ…っ」 手塚が嵐のように激しくリョーマの胎内を突き荒らし始める。 「ひ、いっ、いいっ、あぁっ、や、あぁぁっ」 ガクガクと揺さぶられ、喘がされながら、リョーマはうっとりと目を細める。 「く……っ……出すぞ……っ」 「あぁっ、あぁぁっ」 「リョーマ……っ!!」 深く深く捩り込んだリョーマの最奥で、手塚の熱塊が大きく膨らみ、勢いよく弾けた。 「あぁっ!」 熱液の塊が腹の底に叩きつけられた瞬間、リョーマも手塚の手の中で弾けた。 「くぅ…っ、んっ、くっ、うっ!」 何度も何度もリョーマの最奥のさらに奥へと肉剣を捩り込み、たっぷりと精液を流し込む。 「ぁ……あ……すごい……いっぱい……」 リョーマが恍惚として、譫言のように呟く。 その呟きにさらに煽られながら、手塚はぐいぐいと腰を押しつけ、リョーマの胎内を自分の精液で埋め尽くしてゆく。 やがて、二人の接合部分から溢れ出すほど精液を注ぎ終えた手塚は、だがすぐにはリョーマの身体を解放せずに、リョーマの深いところに肉棒を留めたまま、しっかりとその細い身体を抱き締めた。 「ぁ……」 「まだ離さない」 「あ、ん…」 手塚の腕の中でリョーマが小さく身動ぐ。 「………ねえ…」 「ん?」 小さく小さくリョーマに呼ばれて、手塚はリョーマを抱き締めたまま返事をする。 「アンタ、どんどん、テクニシャンに、なってない?」 「え?」 荒い呼吸のままボソボソと言われ、手塚は目を丸くしてリョーマを覗き込んだ。 「リョーマ?」 「だって………エッチするたびに、アンタ、巧くなっていくから……もう、オレ、メロメロ」 言っておいて恥ずかしくなったのか、リョーマが手塚の腕の奥に顔を埋めてしまう。 「……そんなに気持ちいいか?」 「………」 返事は声に出さずに、リョーマはただ頷いた。 「こんなんじゃ、満月の時は、オレ、どうなっちゃうのか、やっぱ、コワイかも……」 「そのために、これをお前に贈ろうと思って作ってもらったんだ」 「え…?」 手塚が手を伸ばし、ベッドの傍らに置いてあった黒い箱を手に取る。 「なに?」 「銀の枷、だ」 「………」 リョーマは口を噤むと、その箱をじっと見つめてから手塚に視線を移した。 「だから、そんなのつけなくていいってば」 「だが恐いんだろう?」 「アンタが恐いんじゃなくて、オレが、もっと乱れちゃいそうでコワイって言ったンだよ?」 手塚は短く沈黙してから、ふわりと微笑んだ。 「俺は、お前がとことん乱れる様を、見てみたい」 「ハズカシイよ」 「つれないことを言うな」 「だって」 唇を尖らせるリョーマに、手塚はクスクス笑いながらチュッと口づける。 「リョーマ、これは銀の枷と、その鍵に当たるものだ。鍵はお前に渡しておく」 「え?」 黒い箱を開けて見せられ、リョーマは意外そうに目を見開いた。 箱の中には、細い銀細工のバングルが二本とアンクレット一本が入っている。 「これとこれは俺が満月の夜につけるべきもの。そして少し小さいこれを、お前に預けたい」 そう言って手塚は、一回り小さいバングルの方をリョーマに手渡した。 「これを着けている者だけが、俺の枷を着けたり外したりできる」 「ぁ……じゃあ…」 輝くリョーマの瞳を見つめて手塚が頷いた。 「俺の枷を着けるのも外すのも、お前の好きにしていいということだ」 「ぁ……ホント…?」 「お前がもう無理だと思った時に、簡単なキーワードで枷を俺に嵌めることができるし、その反対も然り、だ」 「反対…?」 「そう……もっと激しく抱いて欲しい時には、枷を外せばいい」 「………えっち…」 ククッと手塚が笑う。 「だから、この銀の枷は、お前の胎内で預かっていてくれ。お前のキーワードで、この枷がお前の身体から飛び出して俺を戒める」 「な、なんか、すごいことになっちゃった?」 「お前の承諾がなければこの方法はやめる。どうする?俺の枷を、預かってくれるか?」 「………」 リョーマは暫し考え込んでから、真っ直ぐに手塚を見つめた。 「いいよ。オレが預かる。それで、アンタの枷を嵌めるのも外すのも、オレが決める」 どこか楽しげに言うリョーマを見つめ、手塚もふっと微笑んだ。 「ありがとう、リョーマ」 「胎内で預かるって、どうするわけ?」 「それは簡単だ」 そう言って手塚は銀のバングルとアンクレットを手に取り、何か呟きながらリョーマの胸に押し当てた。 「あ…」 痛みも何も感じないうちに、それらはスッと溶けてリョーマの体内に取り込まれた。 「スゴイ……魔法みたい」 先程の結界といい、今の術といい、一体月の狼の秘められた力はどれほどのものなのかとリョーマは思う。 (もしかして、ずば抜けて優れた種族なんじゃ……) 見た目も例えようもないほど美しく、こんな不可思議な能力にも長けている種族。この種族が本気で何かコトを起こそうとしたならば、敵うものはいないかもしれない。 「アンタって、やっぱ、最強だね」 「……俺はお前には敵わないから、それならお前が最強ということになるな」 クスクスと笑われ、ギュッと抱き締められて、リョーマはどこかうやむやに誤魔化されたような気分になる。 (ま、いっか) どんな手塚も愛しているから。 どんな姿でも、どんなに恐ろしくも素晴らしい能力を持っていたとしても。 (オレが国光を好きでいることには、関係ない) 「国光……大好き…」 囁いて手塚を見上げると、手塚は柔らかく微笑んでくれる。 「愛してる、リョーマ」 「うん」 微笑んで、微笑み返されて。 それだけでとてつもない幸福感を感じられる。 この男の存在自体が、自分の幸せの根源なのだとリョーマは思う。 (きっと、この枷は使わないよ) それならそれでいいのだろうとも思える。いや、「だからこそ」、手塚は自分に「鍵」を預けたのかもしれない。 「そうだ、ねえ、キーワードって?」 甘い幸福感に包まれながら、リョーマは、ふと思い出したことを手塚に訊ねる。 「ああ、それは……」 手塚はリョーマの耳に唇を寄せてひと言囁いた。 「………なに、それ。そんなこと、オレがアンタに言うわけないじゃん」 「だからキーワードにした。それを言えば、俺の身体に枷が嵌って、銀の俺は抑え込まれる」 「………じゃ、逆に枷を外す時は?」 手塚はふっと微笑み、またリョーマの耳に唇を寄せて囁いた。 「!……それも、言わないからね!」 「そうか?俺はぜひ言ってみて欲しいが、な」 「もう!そんなキーワード、どうやって設定したわけ?」 「さあ。詳しい枷の作り方は教えてくれなかった」 「………」 尖らせたままのリョーマの唇に、手塚が優しくチュッと口づける。 「確認しておくが、この枷は、『満月の銀の俺』にしか効かないからな?」 「わかってる。べつにいいよ、使わないから」 「だが、次の満月の夜に、一度試しておいた方がいいだろう?」 「ヤ・ダ」 「いざというときに使えなかったらどうするんだ」 「だって、ヤダよ、試しでもアンタに『大ッキライ』なんて……ぁ……」 ククッと手塚が笑う。 「試しでも言いたくないほど口にしない言葉だからキーワードにできるんだ。…じゃあ、外しのキーワードは?」 「絶対言わない」 「それを言うかどうかは、俺次第ということか」 「絶対ヤダ。言わない。ハズカシイ」 「だから、俺がお前の理性を飛ばせるかどうか、ということだろう?」 「………言わないから」 「じゃあ、試してみるか」 「え……?」 手塚はふっと微笑むと、リョーマの腰を強く引き寄せた。 「あぁぅっ!」 「お前が帰るまでに、言わせてみせようか?」 「や……言わない、から…っ!」 「キーワードじゃなくても、一度は言われてみたいものだが」 「………」 緩く腰を揺すりながら手塚が囁くと、リョーマはちょっと黙り込んでから、手塚の首に腕を回した。 「……リョーマ?」 「それなら、言ってもいい」 「え?」 「キーワードとか、試しに、とかじゃないなら、言ってあげても、いい」 「………」 手塚が驚いたように目を見開いてリョーマを見つめている。 その手塚の表情を見たリョーマは、ひどく楽しい気分になってきた。 (この言葉言ったら、国光はどんな反応するんだろ) 悪戯心がむくむくと頭を擡げてくる。 「ね、国光……」 「え……」 「オレを………『オレを、犯して』…?」 「!!!」 「わ」 手塚の反応に、今度はリョーマが驚いて目を見開いた。 「国光、真っ赤……」 「ばか…っ、こんな状況で、いきなり言うな…っ」 「あっ」 手塚の熱塊が、リョーマの胎内で一気に固く張りつめる。 「あぁんっ、急に、おっきくしないで……っ」 「お前のせいだろう」 それまでの穏やかな雰囲気がうって変わって、しっとり艶めいた、濃厚な空気に変わる。 「や、あっ、あぁぁんっ」 いきなりガツガツと腰をぶつけられ、リョーマの身体の奥に、消えかけていた情欲の焔が再び灯される。 「あぁ、あ、んっ、くにみつ……あぁ、いいっ、好きっ、好き…っ」 「リョーマ……あぁ……好きだ、リョーマ……っ」 「ひあぁぁんっ」 手塚の動きに合わせて腰を振りながら、リョーマはふわりと微笑む。 (ホントに、……大好きだよ、国光……) ギュッと手塚に縋りつくと、手塚もギュッと抱き締め返してくれた。 「帰したくない……このままずっと……」 「……いつか、二人で…暮らそ、国光……」 喘がされながら、だがしっかりと、リョーマは手塚の目を見つめて囁く。 手塚の動きが、一瞬、止まる。 「………ああ、そうだな」 「そうしたら、ずっと、いっしょに、エッチしてよっか…」 「ばか…」 クスッと笑われて、だがすぐに真剣な瞳で二人は見つめ合う。 「……お前がそれでもいいなら、俺は永遠にお前を抱くぞ」 「いいよ……アンタに抱かれるの、好き」 「だから、煽るなというのに…っ」 再び手塚の動きが激しくなる。 「あっ、あっ、あっ、あぁぁん」 「……っ、リョーマ…っ」 激しく揺すられ、強すぎる快感の中でリョーマはうっとりと微笑む。 (こんな時間がずっと続くなら……朽ちない身体をもらえて、よかったって思える……) ずっと神という存在を恨んできた。 普通の人間とは違う時間を生きなければならない身体を呪った。 誰にも受け入れてもらえないのは、愛してもらえないのは、この朽ちない身体のせいだと思っていた。 だからリョーマは、今、初めて、自分の祖先がヴァンパイアとして生まれ変わったことに感謝した。 「くにみつ……っ」 普通とは違う肉体のおかげで、本当の愛を知った。 朽ちることのない身体を愛おしんでくれる、大切な存在を見つけることができた。 そして、奇跡的に出逢った愛する存在と、永遠に愛し合えることができることを、本当に、心の底から感謝した。 「くにみつ、くにみつ……イ、ク……っ」 「ああ、俺も……お前の奥に、出すぞ…っ」 「ん……出して……いっぱい……」 「ぁ……リョーマ……っ!」 「ぁあぁあんっ」 胎内の最奥に熱い精液がたっぷりと注ぎ込まれ、すでに手塚の精液で満たされていたリョーマの腸内から留めきれなかった濁液が溢れ出す。 「あぁ……ぁ……」 「く……リョーマ……あぁ……っ」 手塚が腰を揺するたびに二人の接合部分から濁液が零れる。 やがて手塚の射精が途切れても、リョーマの身体は小さく痙攣を繰り返し、手塚に注ぎ込まれた濁液を後孔から溢れさせ続けた。 「ぁ……ごめ……くにみつ……いっぱい、零れちゃってる……」 「ん……構わない……お前の中が、俺のでいっぱいになっている証拠だ」 「うん……オレのナカ、国光の出したヤツでいっぱいだよ……」 「……もっと溢れさせたい……いいか…?」 熱っぽく見つめられ、リョーマの上気した頬がさらに熱を持つ。 「オレのこと、溺れさせたいの?」 「……ああ……俺に、溺れてくれ……」 「もうとっくに溺れてるよ」 (これ以上溺れたら、アンタのこと好きすぎて、死んじゃう) 言葉には出さずに手塚にきつく縋りつくと、手塚はリョーマを労るように優しく髪を撫でてくれる。 「すき……好きだよ、国光…」 「リョーマ…好きだ…」 もう何度も繰り返した言葉。 だがきっとこれからも、何度も繰り返す言葉。 『愛してる』 輝き始めた半月が、カーテンの隙間から二人を見守っている。 満ちて、欠けて、時には人の前から姿を消して。 だが常に月は天空にあり続け、人々と共に在る。 自分たちも、天空の月のようであればと、リョーマは思う。 手塚と出逢えたから、そんなふうに考えられるようになれた。 「くにみつ…」 腕で、身体で、胎内で、手塚をきつく抱き締めながら、リョーマは呟く。 「アンタに逢えて、よかった……」 リョーマの言葉に手塚は柔らかく微笑んだ。 微笑んで、微笑み返して、二人はそっと口づけを交わす。 出逢ってからもうすぐ一年を迎える恋人たちは、 二人だけの時間の中で、 二人でいられることに、 心から感謝した。 END
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