知合に 小学校の先生がいます. 子供達の間で人気があるらしく, どうかすると
とっくに卒業した筈の子まで, 悩みを抱えて 駆け込んで来ることが あるようです.
ある年の夏休み, 先生は子供達を近くの山へ連れて行くことに なりました.
・ "あの山には マムシ がいて危険なんだ. みんな長ズボンと長靴を穿いて来る
ように. それから シャツ も 長袖のを着るんだ.." 先生は 充分注意を与えました.
・ 子供達は先生の注意を よく守りました. いつもは半 ズボン や スカ−ト 姿の
子供達も, その日は みんな 長ズボンに 長靴という いでたちです. 良く晴れて
暑い夏休みの昼下りでしたが.
・ ところがです.. 男の子が マムシ に手を噛まれて しまったのです. 少し 知恵
遅れ気味の子だったそうですが..
・ 運良く 一命を 取り留めました. 近所の農家に 応急処置の上手な人が いて,
腕の心臓寄りを縛ったり傷口周りの血を吸い出したりという 適切な処置をして
くれたのです. それから 町の大きな病院へ担ぎ込んだのですが, 集中治療室
での面倒な処置が必要だったと聞いています.
・ 後で先生は事故の起った様子を居合せた子供達から聞取って愕然としました.
"先生が マムシ のことを云ってたから持っていこ.." その子は マムシ を素手で
掴んでしまったのです.
・ "<マムシ がいて危険> なんて云っても ダメ なんだ. <マムシ に手を出すな>,
<マムシ を見たら逃げろ> 少くとも あの子には, そういう言い方が必要なんだ.."
先生は この事件を, 深く脳裡に刻み込んだことでしょう.
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