ミカンは、今一番の健康食品

1. みかんはビタミン、ミネラルの宝庫
冬の果物といえば、みかんにりんご。特に「こたつでみかん」は、だれでもが思い浮かべる冬の光景の1つではないでしょうか。グレープフルーツやオレンジなどの輸入柑橘類が増えてきたとはいえ、みかんは依然として庶民の味の代表といえます。事実、総務庁の「家庭年間調査」によると、家庭で1年間に最も多く買われる果物はみかんです。ちなみに、その量は21kgで、第2位のりんご(16kg)や第3位のバナナ(15kg)を大きく引き離しています。
日本人に親しまれてきたみかんの中には、たくさんの栄養素が詰め込まれていて、驚くべきパワーを秘めています。みかんに含まれる主な栄養素は、ビタミンA、C、フラボノイド(ヘスペリジン)、ミネラルではカルシウム、カリウム、リン、マグネシウム、鉄、有機酸ではクエン酸、糖質としてブドウ糖、果糖、蔗糖(しょとう)、さらにペクチンなどの食物繊維、そして、がんの予防に効果があるとして注目を集めているβ-クリプトキサンチンなど、まさにみかんは栄養の宝庫といえます。

2. 細胞にバリアを作りがん化を防ぐβ-クリプトキサンチン
みかんの仲間は世界中に約900種類あるといわれていますが、私たちがよく食べる種なしみかんは「温州(うんしゅう)みかん」と呼ばれる種類です。この温州みかんの色素であるβ-クリプトキサンチンにがんを予防する効果があることがわかりました。農林水産省果樹試験場と京都府立医科大学の共同研究チームの動物実験によって、みかんに含まれるβ-カロチン(ビタミンAの前駆体)の5倍もの発がん抑制効果がβ-クリプトキサンチンにあることが判明したのです。
β-クリプトキサンチンは細胞に強力なバリアを作ることで、発がん物質や活性酸素によるがん化を防いでいるといいます。
このβ-クリプトキサンチンは、柑橘類の中でも温州みかんに特に多く、オレンジやグレープフルーツの約60〜100倍含まれていることがわかっています。みかんの皮にも実にもほぼ同じ程度に含まれています。1日に1〜2mg(みかん1〜2個)とることで発がん予防の効果が期待できるといわれてます。

3. 血圧上昇を抑え、血管の老化を防ぐヘスペリジン
みかんをスジや袋ごと食べる人とそうでない人がいますが、どちらのほうが体にいいと思いますか。正解はスジや袋ごと食べるほうです。その理由は、スジや袋に含まれるペクチンなどの食物繊維と、フラボノイドの一種であるヘスペリジンという2つの成分にあります。
みかんの食物繊維は果肉にも含まれていますが、スジをつけたまま袋ごと食べたほうが果肉だけ食べるより約4倍も多くとることができます。みかんに多く含まれるペクチンは水溶性で、腸の中の水分量を適正に調節する整腸作用があります。ペクチンはちょうど海綿のような働きをして、便秘のときにはペクチンがためている水分を便に与えて軟らかくし、逆に下痢のときは便から水分を吸い上げてくれるのです。
みかんのスジや袋には、整腸作用以外にもう1つの強力なパワーが秘められています。そのパワーを発揮する物質は、ポリフェノール(ビタミン様物質)の1つであるヘスペリジンです。フラボノイドはポリフェノールの一種ですが、ポリフェノールといえば赤ワインに多く含まれていて抗酸化作用によって高血圧や動脈硬化などを予防することで話題になりました。
ヘスペリジンにも血圧上昇を抑制する働きがあるといわれています。また、毛細血管壁を保護し、血管の老化を防いでくれます。さらに、生活習慣病の誘因ともなる中性脂肪を分解する働きも持っています。ヘスペリジンはスジや袋に多く、袋には果肉の約50倍、スジには果肉の約300倍も含まれています。高血圧や動脈硬化をはじめとした生活習慣病が気になる方は、今日からスジを取らずに袋ごとみかんを食べることをおすすめします。

4. 効率よくビタミンCがとれて免疫力アップ
みかんの効用は高血圧や血管の老化、発がんなどの予防、整腸作用にとどまりません。みかんでまずはじめに連想するのは、ビタミンC ではないでしょうか。ビタミンCは免疫力をアップして、今の時期ならかぜに対する抵抗力を強めてくれます。また、ストレスに対する抵抗力を高めたり、細胞のがん化を抑制する働きもあります。
みかんのビタミンC の含有量(下図)は、ほかの果物と比べて多いわけではありません。それどころか、レモンやキウイフルーツ、いちごなどの2分の1〜3分の1程度です。ところが、ほかの果物よりみかんのほうが効率よくビタミンC をとることができるのです。
ビタミンCには壊れやすいという性質があります。熱を加えたり水にさらすのはもちろんのこと、果物なら皮をむいて口に入れる間にも空気に触れて酸化されて壊れていきます。その点、みかんは皮や袋でがっちりと守られていますから、果肉を外気にさらす果物より効率よくビタミンC をとることができるのです。
さらに、みかんには酸っぱさの元であるクエン酸が豊富に含まれています。このクエン酸にもたくさんの働きがあります。血液をサラサラに保ち、コレステロール値を抑えてくれますから動脈硬化になりにくいといえます。また、栄養の吸収や体の抵抗力を高めたり、血行を促進したり、酸化されやすいビタミンCを守る作用もあります。
今まで挙げた栄養素のほかにも、抗酸化作用や紫外線の有害作用を防ぐβ-カロチン、神経の安定に欠かせないカルシウム、ナトリウムを体外に排泄して血圧の上昇を抑制するカリウムなど、実にさまざまな栄養素をバランスよく含んでいます。

5. おいしいみかんの見分け方
いくら体に良くても、やはりおいしくなくてはいけません。そこでおいしいみかんを見分けるポイントをアドバイスしましょう。
1. 濃いだいだい色をしている。
2. あまり大きくないもの。逆にあまり小さすぎると酸味が強い。
3. 横から見て腰高より平らなほうが味にこくがある。
4. 皮が柔らかくて、きめが細かく、肌触りがすべすべしているもの。
5. へたの軸が細いもの。へたが太いものは若い樹になったみかんなので、どうしても水っぽい。
NIKKEI NET 「いきいき健康」より